Eはエルボー ― 地味なのに一番“魂が見える”技 ―
はじめに
プロレスには派手な技が山ほどある。
空を飛ぶ技、首を叩きつける技、名前を聞いただけでワクワクする必殺技。
それでも――
試合の空気を一変させるのは、シンプルな一撃だったりする。
それが
エルボー(Elbow)。
肘を振り抜くだけ。
走らない。
飛ばない。
なのに、なぜか会場は沸く。
今回は
プロレスABC「E=エルボー」
地味なのに、プロレスの本質が詰まりきった技を、
歴史・感情・名レスラー、そして三沢光晴という存在から徹底的に掘り下げる。
エルボーとは何か(基礎編)
エルボーとは、その名の通り肘打ち。
プロレスでは
- 顔面
- 首
- 鎖骨
- 胸
などに打ち込まれる。
多くの団体では「パンチ」は反則扱いだが、
エルボーは合法。
殴っているようで、殴っていない。
でも、どう見ても痛そう。
このギリギリのリアルさこそが、
エルボーがプロレス向きな最大の理由だ。
なぜエルボーは“効いて見える”のか
理由は3つある。
① 音がリアル
エルボーが当たると
「バチン!」「ドン!」
乾いた、重い音が鳴る。
観客は反射的に
「うわ、効いた…」
と感じてしまう。
② 助走がいらない
エルボーはその場で出せる。
=感情がそのまま技になる。
怒り、悔しさ、意地。
溜め込んだものが、そのまま肘に乗る。
③ 表情が丸見え
エルボーを打つ瞬間、
レスラーはだいたい“いい顔”をしていない。
歯を食いしばり、
目を見開き、
感情がむき出しになる。
だから観る側も、感情移入してしまう。
エルボーは「試合の会話」
プロレスは技の応酬ではなく、会話だ。
エルボーは、言葉を使わないメッセージ。
- 「まだ立てるか?」
- 「ここからだぞ」
- 「お前の覚悟はその程度か?」
エルボー合戦とは、
言葉のない口喧嘩なのである。
名エルボー使いたち
アントニオ猪木
猪木のエルボーは“合図”。
一発入ると
「さあ、始めるぞ」
と会場の空気が変わる。
プロレスにおけるエルボーの原点。
小橋建太
剛腕エルボーの象徴。
一発一発が重く、
打つたびに相手の体力が削れていく。
逆転の流れを作れるエルボー。
石井智宏
現代最強クラス。
助走なし、溜めなし。
感情だけで打つエルボー。
「効かせる」ではなく
「削る」エルボー。
オカダ・カズチカ
スピードと精度。
エルボーからレインメーカーへつなぐ流れは、
現代プロレスの完成形のひとつ。
そして本題 ― 三沢光晴という“完成形”
エルボーという技を
攻撃から哲学へ昇華させたレスラー。
それが
三沢光晴。
三沢のエルボーは派手ではない。
だが、異常に重い。
なぜか。
三沢のエルボーが特別な理由
それは――
逃げないから。
三沢は真正面から打ち合う。
- かわさない
- 逃げない
- 誤魔化さない
相手のエルボーを受け、
同じ距離、同じ高さで打ち返す。
そこにあるのは技術ではなく、
覚悟。
三沢エルボーは「蓄積型ダメージ」
三沢のエルボーは一発で倒さない。
同じ場所を
何度も
何度も
叩く。
すると試合後半、
相手の動きが目に見えて鈍る。
観客は気づく。
「あ…
あのエルボーが、今になって効いてきてる」
これが三沢プロレス。
エルボー合戦=三沢の真骨頂
助走なし。
間合いを詰め、
真正面からの打ち合い。
どちらが先に崩れるのか。
会場は静まり返り、
一発ごとに息を呑む。
静かな緊張感。
これを作れたレスラーは、
そう多くない。
ウッシ、三沢エルボーを知る
ここでウッシ。
映像を見ながら、軽くひと言。
「そんなに派手じゃないモー?」
次の瞬間――
想像の中で三沢のエルボーが直撃。
ズドン。
ウッシ、スーツのまま後ずさり。
おなじみのポカーン顔。
「……
今の、あとから来ましたモー……」
そう。
三沢のエルボーは、遅れて効く。
なぜ三沢はエルボーを選び続けたのか
三沢は
「技を見せたい」レスラーではなかった。
見せたかったのは
闘っている姿そのもの。
エルボーは、ごまかしが効かない。
だからこそ三沢は、
エルボーを信じた。
エルボーという技の完成形
猪木が「始まり」なら、
三沢は「完成」。
- 感情
- 覚悟
- 物語
- 説得力
すべてを
エルボー一発で表現できたレスラー。
だから今も
「エルボーといえば?」
と聞かれれば、真っ先に名前が挙がる。
三沢光晴。
まとめ:Eがエルボーである理由
派手じゃない。
でも、嘘がない。
技より感情。
演出より覚悟。
エルボーは、
プロレスという表現の芯だ。
だから
プロレスABC「E」=エルボー。
これで正解。




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